歯周病治療とは？
歯周病は、歯を支える組織に炎症が起こる病気で、日本人の成人の80%以上が罹患しているといわれています。歯茎だけが炎症を起こしている歯肉炎と、歯を支える骨（歯槽骨）まで破壊される歯周炎に分類されます。
初期段階ではほとんど自覚症状がないため、「静かな病気」とも呼ばれています。10代から進行し始め、30代で歯茎から出血する頃には、すでに歯肉炎や歯周炎になっていることが少なくありません。朝起きたときの口のネバつき、歯磨きのときの出血、口臭、歯茎の腫れなどは歯周病のサインです。
歯周病の原因は、歯垢（プラーク）に含まれる細菌です。特にP.ジンジバリス、T.デンティコーラ、T.フォーサイスという3種類の菌が主な原因菌として知られています。
当院では「バナペリオ」という検査で、これらの菌の存在を数分で判定できます。歯垢を採取するだけの痛みのない検査です。
「歯周病は治らない」と思われがちですが、骨が失われていない歯であれば、適切な治療により改善が可能です。治療の基本は「お口の中を清潔に保つこと」。定期的なクリーニングと日々のセルフケアで、健康な歯茎を取り戻しましょう。
歯周病の進行ステージ
歯肉炎
歯茎にのみ炎症が起きている状態です。歯磨き時に出血することがありますが、痛みはほとんどありません。この段階であれば、適切な歯磨きと歯石除去で健康な状態に戻すことができます。
軽度歯周炎
炎症が歯茎から歯を支える骨に広がり始めた状態です。歯周ポケットが3〜4mm程度に深くなり、歯石が歯茎の下にも付着し始めます。冷たいものがしみることもありますが、まだ自覚症状は少ない段階です。
中等度歯周炎
歯を支える骨が半分程度破壊された状態です。歯周ポケットは4〜6mmに達し、歯がぐらつき始めることもあります。歯茎が下がって歯が長く見えたり、歯と歯の間に隙間ができたりします。口臭も強くなってきます。
重度歯周炎
歯を支える骨の大部分が失われた状態です。歯周ポケットは6mm以上となり、歯の動揺が著しくなります。膿が出たり、噛むと痛みを感じたりすることも。放置すると歯が抜け落ちてしまいます。
歯周病は進行すると、心臓病、脳卒中、糖尿病の悪化、早産のリスク増加など、全身の健康にも影響を及ぼします。早期発見・早期治療が何より大切です。
治療の種類（再生治療、リグロス、エムドゲイン）
歯周病治療には、進行度に応じてさまざまな方法があります。基本治療から高度な再生治療まで、患者さまの状態に合わせて選択します。
基本治療
スケーリング・ルートプレーニング（SRP）により、歯石や歯垢を徹底的に除去します。超音波振動装置を使用し、痛みをできる限り抑えた治療を行います。バナペリオ検査で原因菌が確認された場合は、特定の抗生物質を処方することもあります。
歯周病の外科的治療
基本治療で改善が見られない場合、歯茎を切開して深部の歯石を除去したり、歯茎の形を整えたりする外科処置を行います。セルフケアがしやすい環境を作ることが目的です。
歯周組織再生治療
失われた歯を支える骨や歯茎を再生させる治療です。当院では以下の材料を用いて歯周組織再生治療を行っています。
リグロス
歯周病で失った歯槽骨や歯根膜などを再生させる薬剤（商品名：リグロス®）です。主成分は、bFGF（塩基性線維芽細胞増殖因子）で、欠損部に塗布すると細胞の増殖や血管新生を促し、骨や歯周組織の再生を助けます。エムドゲインと同様に歯を抜かずに残す選択肢を広げる再生療法として用いられます。
エムドゲイン
歯周病で失った骨や歯茎の付着を再生させる薬剤です。ブタの歯胚から抽出したタンパク質を含むゲル状製剤で、歯根に塗布すると歯が生えるときと似た環境を作り、骨や歯周組織の再生を促します。従来より侵襲が少なく、歯を抜かずに残せる可能性を高める治療法として用いられます。
治療の流れと期間の目安
STEP.1
初診・検査
問診、口腔内診査、レントゲン撮影、歯周ポケット検査、バナペリオ検査などを行います。現在の歯周病の進行度を正確に把握し、治療計画を立案します。
STEP.2
基本治療
歯磨き指導から始め、歯石除去（スケーリング）、深部の歯石除去（SRP）を行います。軽度の歯周病であれば、この段階で改善が見られることが多くあります。必要に応じて抗生物質を処方します。
STEP.3
再評価
基本治療の効果を確認するため、再度歯周ポケット検査を行います。改善が見られれば定期メンテナンスへ移行します。
STEP.4
歯周病の外科的治療・再生治療
基本治療で改善が不十分な場合、外科的治療や再生治療を行います。エムドゲインを使用した場合、治療期間は約8ヶ月、来院回数は14回程度が目安となります。
STEP.5
定期メンテナンス
治療後は3ヶ月に一度の定期検診とクリーニングが必要です。細菌は約2ヶ月でもとの数に戻るため、継続的なケアが欠かせません。
治療期間は歯周病の進行度により異なりますが、患者さまと二人三脚で取り組むことで、健康な歯茎を取り戻すことができます。
メリット・デメリット
歯周病治療のメリット
- 歯を失うリスクを大幅に減らすことができます
- 歯茎の腫れや出血がなくなり快適に食事ができます
- 再生治療により、失われた骨や歯茎を
回復できる可能性があります
- 口臭が改善され、さわやかな息を取り戻せます
- 全身の健康リスク（心臓病、脳卒中、糖尿病など）
を軽減できます - 見た目が改善され、自信を持って笑顔になれます
歯周病治療のデメリット
- 治療期間が長期にわたることがあります
（重度の場合6ヶ月〜1年） - 通院回数は症状の進行度によって異なりますが
重度の場合は8〜12回以上となります - 外科治療を行う場合、
一時的に痛みや腫れが生じることがあります - 再生治療（エムドゲインなど）は保険適用外のため、
費用負担が大きくなります - 治療後も定期的なメンテナンスが必要です
（3ヶ月ごと） - 重度の場合、完全に元の
状態に戻すことは困難な場合があります - 喫煙者は治療効果が低下する可能性があります
歯周病治療は、早期に始めるほど負担が少なく、効果も高くなります。気になる症状があれば、早めの受診をおすすめします。
費用
保険診療の場合
基本的な歯周病治療は保険適用となります。
| 初診時（検査・レントゲンなど） | 3,000〜5,000円程度 |
|---|---|
| スケーリング（歯石除去） | 2,000〜3,000円程度 |
| SRP（歯茎下の歯石除去） | 3,000〜5,000円程度 |
| 歯周病の外科的治療 | 10,000〜20,000円程度（1部位） |
| 定期メンテナンス | 2,000〜3,000円程度 |
※3割負担の場合の目安です
自費診療の場合
価格は税込です。
| バナペリオ検査（歯周病原因菌検査） | 1,000円 |
|---|---|
| エムドゲイン（歯周組織再生療法） | 150,000円（1箇所） |
お支払い方法
現金のほか、各種クレジットカード（自費診療に限る）もご利用いただけます。
治療開始前に、必要な費用について詳しくご説明いたします。保険診療で対応できる部分はできる限り保険を適用し、患者さまの負担軽減に努めています。
よくある質問
Q
歯周病は完治しますか？A
適切な治療とメンテナンスにより、歯周病の進行を止めることは可能です。軽度であれば健康な状態に戻すことができます。ただし、失われた骨を完全にもとどおりにすることは難しいため早期治療が重要です。
Q
治療中の痛みはありますか？A
超音波振動装置を使用し、痛みをできる限り抑えた治療を心がけています。必要に応じて麻酔も使用します。外科治療後は一時的に痛みが出ることもありますが、痛み止めを処方しますのでご心配ありません。
Q
歯周病は遺伝しますか？A
歯周病そのものは遺伝しませんが、歯周病になりやすい体質は遺伝する可能性があります。ご家族に歯周病の方がいる場合は、より注意深くケアすることが大切です。
Q
若くても歯周病になりますか？A
はい、10代から歯周病が始まることがあります。特に歯肉炎は若い方にも多く見られます。早めの予防が将来の歯を守ることにつながります。
Q
タバコは歯周病に影響しますか？A
喫煙は歯周病の大きなリスク要因です。血流が悪くなり、治療効果も低下します。禁煙は歯周病治療の成功率を高めます。